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支配(評不要)

 投稿者:江見 由宇  投稿日:2018年 5月15日(火)11時06分54秒
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  あの時
彼の声にも表情にも
怒りを見つけることができなかった

  僕の使っている言葉は
  もう なくなってしまうのだと思います

流暢な日本語で そう言った
もうきっと会うこともない人の
寂しげで 優しい声が

何年経っても
忘れられない


 ひとつの言語が なくなろうとしている


日本という国に生まれて

いま私は日本語を使っている
そうじゃなかった可能性を思う

この長く短い歴史の中で
この国の公用語が
日本語でなくなっていても
おかしくはなかった
日本語が禁止されていても
きっと仕方がなかった

ありとあらゆる書物に封をされ
大半を燃やされ
残存するものにも触れることができなくなり
そうして この世界から締め出された可能性

なのに
日本語を使い続けることができているということ

それはきっと
幸運だった


そして
私でも知っている
ひとかけらの史実

日本という国が
他国の言語を奪わなくて
よかった

でも
それは 結果論でしかなくて
そういうことを確かにした

そして
今まさに
そういうことが行われている

それは 支配

受け入れるしかない 流れ


 ひとつの言語が なくなろうとしている


言葉だけじゃない
名前を 宗教を 渡航を 思想を
いろいろなものを
抑えつけられて
押しつけられて
声をあげたら圧し潰されて

それはきっと正しくない
だけど誰も止めてくれない

  僕たちの子供は
  僕たちの言葉を知らずに
  大人になります

  どうすることもできないのです

ひっそりと(世界に知られることなく)
ゆっくりと(数十年という歳月をかけて)
そうして いつのまにか
この世界から
消えていくのか

そんなことが ゆるされる 世界

ただ涙が流れるだけで
私には何もできない
知ってしまったのに
関わることができない

ねぇ

世界中の全ての人々が
世界中の全ての言語で
ありがとう と ごめんなさい を
言えるようになったなら
その気持ちがあったなら
世界はほんの少し優しくなれるだろうか

私には何もできない


  ケチュルン



日本という国に生まれた

この国の言葉をうつくしいと思う
それは 生まれた国だから なのか
贔屓目なのか 分からない

この国の言葉が使えること
それは
 当たり前のこと
  かも
   しれない
    けど



60秒に満たない
些細なニュースを耳にするたびに
勝手に涙が流れて
その背景が流れることを祈っている

どうにもならないから
知らなくてもいいなんて
そんなことは絶対ない
だけど
光は当たらない
世界の楽しさと美しさしか流れない
主要な国の悲しみしか流れない
世界の小さな事実が流れない


 ひとつの言語が なくなろうとしている


きっと あなたにはもう会えない
でも もし
あなたと同郷の人に会えたなら
そんな機会に恵まれたなら

私には何もできない けど
その人と話をしよう

なんでもいいから
その人の声を
聴かせてもらおう

そして言おう
あなたの慣れ親しんだ言葉で
ありがとう、を

 
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