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月の雫

 投稿者:九丸(ひさまる)  投稿日:2020年 2月14日(金)00時35分26秒
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  通ってきた道の数ほど
そんなことが言えるほど多くはないけれど
それなりに夢なんてものは捨ててきた
羽化できなかったサナギの亡骸
後ろを振り返ることもなく
捨ててきた数も忘れてしまった
いや、捨てることに慣れてしまったのか
しょうがないとの言葉に殴られて
しょうがないとの言葉に慰められもして
踏めそうな道を選び選び
悩みながらを繰り返し、歩いている

今夜は三日月がとても綺麗だ
薄靄に邪魔されることもなく
輪郭がくっきりと浮かんでいる

そんな三日月から一雫
突然垂れた銀光一滴
ずりずりと歩く僕は
思わず掬ってしまった
掌で控えめに眩い雫は
やわらかくて
それでいて凛として
そして、暖かくて

優しい光が道を指す
その光はまだ弱くて
照らすというには心細いけれど
せっかく僕を見つけて
せっかく僕のところに来てくれたんだ
その道に踏み出すのも悪くないのかもしれない

恐る恐る踏み出した一歩は
なんとか踏めるようだ
この光る雫が羽化するかなんて
今はわからないけれど
大切に育ててみよう
そう思い、また一歩を踏み出す

光が瞬いた
また道の先が少し見えた
今度は、夢が目標になり
そして、現実に変わるかもしれない
そんな心持ちにさせてくれる

お礼を言いたく見上げた三日月は
相変わらず綺麗に在るだけだった
でも、心なしか
微笑んでいるように見える

「歩くことが大切なんだよ」
そんな言葉が降ってきたような気がした
 
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