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急いではいけない

 投稿者:ピロットメール  投稿日:2021年 9月20日(月)00時59分46秒
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  椰子に羊歯 生気溢れる伸びやかな葉叢の中
薄緑に染まる巨大な池がある

天色の泉から流れ込む 温かい池の水
大気と溶け合い 水面は霞に包まれる

色とりどりの熱帯性の睡蓮の花は
憧憬の眼差しで 白い太陽を見つめている

大きな盥のようなオオオニバス
緑の葉は 空の青さを反射させ
自らも照り輝く

ここは 太古の日本か
遠い異国 未開の地か

靄はくるむ 池に佇む私を
幻想世界に連れ去る
水面に見る白昼夢は 夜半の夢に続いてゆく

 *
岩走る青磁色の湯
垂水の清らかな音は
月光に響いている さらさらと

星月夜 オオオニバスの舟に 我遊ぶ
さざ波は 水面に映る月影を散らし
円い翡翠舟は 月桂を散り敷き 悠然と進んでゆく

月華に輝く 蝋細工のような睡蓮
仄白く浮かび上がる花を愛でつつ
詩を詠ずる

 *

月も星も 植物も動物も
それぞれの時間の中
それぞれの速度で生き
命を繋いで来た
人だけが 未熟なまま 急ぎ過ぎた
人としての本分以上の速さを求め
生物の 自然の時間軸を狂わせた
地軸さえも捻じ曲げてしまった

太古の息吹を夜風に感じる
古代植物と同化し 共に呼吸する
本来の 生きる速度を取り戻すために

深呼吸する速さで生きる
急いではいけない

オオオニバスの低い呟きに
睡蓮の幽き囁きに
遠く 迦陵頻伽の妙なる歌も聴こえる

月涼し
清風が頬をなで
睡蓮の花びらを 一枚一枚震わせてゆく

忙しいと 人は心を亡くす
亡くしてはならない心
時の流れを鑑み 自然を 己を見つめる心
表面だけでなく 見えぬ裏面までも見つめる余裕
大切なものを忘れないように 失わないように

急いではいけない
 
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